溶接作業の健康診断とは?溶接ヒューム対策とヒュームコレクターを紹介!
金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者には、溶接ヒュームによる健康障害を早期に把握するため、特定化学物質障害予防規則に基づく健康診断が必要です。
具体的には、雇入れ時または対象業務への配置替え時と、その後6か月以内ごとに1回、定期に健康診断を行います。
また、金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者については、特化則の健康診断とは別にじん肺法に基づくじん肺健康診断も関係します。
本記事では、誰が対象になるのか・いつ受けるのか・一次健康診断と二次健康診断では何を確認するのか・健診後に事業者が何を行うのかを整理します。
INFORMATION DATE
法令・制度に関する記載は2026年9月18日時点で確認した厚生労働省・労働局の公開情報に基づいています。法令や健康診断の運用は改正される可能性があるため、実務では必ず最新の公的情報をご確認ください。

KEY POINTS
健康診断は「受けて終わり」ではない
定期健診
雇入れ・配置替え時、その後6か月以内ごとに1回。
二次健診
一次健診の結果などから医師が必要と認めた場合に実施。
健診後
結果通知・記録保存・報告・必要な就業上の措置まで行う。
誰が対象?溶接ヒュームの特殊健康診断
溶接ヒュームを製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者は、特化則に基づく健康診断の対象になります。
対象となる金属アーク溶接等作業には、アーク溶接だけでなく、アークを用いた溶断やガウジングなども含まれます。
また、健康診断については、作業場所が屋内か屋外かにかかわらず、対象業務に常時従事する労働者が対象です。
健康診断を行うタイミング
まず、健康診断は雇入れ時または対象業務への配置替え時に行います。
その後は、6か月以内ごとに1回、定期に実施します。
OFFICIAL INFORMATION
厚生労働省|特定化学物質障害予防規則を確認する →一次健康診断|最初に確認する5つの項目
一次健康診断では、作業歴や作業条件に加えて、呼吸器症状やパーキンソン症候群様症状、握力などを確認します。

業務の経歴の調査
作業条件の簡易な調査
既往歴の確認
せき・たんやパーキンソン症候群様症状など、溶接ヒュームによる症状の既往歴を確認します。
現在の症状の確認
せき・たん、手指の振戦、歩行障害、発語異常などの有無を確認します。
握力の測定
つまり、一次健康診断では単に「体調が悪いか」を確認するだけではありません。これまでの業務や現在の作業条件も含めて、溶接ヒュームへのばく露と健康状態を確認します。
二次健康診断|医師が必要と認めた場合に行う検査
一次健康診断の結果、他覚症状が認められる場合などで、医師が必要と認めたときは二次健康診断を行います。
さらに詳しく状態を確認するため、主に次の項目が定められています。
作業条件の調査
一次健康診断より詳しく作業条件を確認します。
呼吸器に関する検査
呼吸器に他覚症状または自覚症状がある場合は、胸部理学的検査と胸部エックス線直接撮影を行います。
神経学的検査
パーキンソン症候群様症状について神経学的検査を行います。
マンガン量の測定
医師が必要と認める場合は、尿中または血液中のマンガン量を測定します。
なお、すべての作業者が最初から二次健康診断の全項目を受けるわけではありません。一次健康診断の結果や医師の判断をもとに、必要な検査へ進みます。
特化則の健康診断とは別に、じん肺健康診断も確認する
金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者については、特化則に基づく健康診断とは別に、じん肺法に基づくじん肺健康診断も関係します。
そのため、「溶接ヒュームの特殊健康診断を受けているから、じん肺健康診断は不要」とは考えないよう注意が必要です。
ただし、じん肺健康診断の実施時期や項目は、じん肺法上の区分や労働者の状況によって異なります。実際の運用では対象者ごとに確認してください。
混同しやすいポイント
特定化学物質健康診断とじん肺健康診断は別の制度です。金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者では、両方の対象となる場合があります。
健康診断の後に事業者が行う4つの対応
健康診断は受診させれば完了ではありません。事業者には結果を適切に管理し、その後の対応につなげることが求められます。
01
結果を本人へ通知
健康診断の結果を労働者へ通知します。
02
個人票を5年間保存
特定化学物質健康診断個人票を作成し、5年間保存します。
03
監督署へ結果を報告
特定化学物質健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長へ提出します。
04
必要な措置を講じる
異常所見がある場合は医師の意見を勘案し、必要に応じて健康保持のための措置を行います。
つまり、健康診断は「受診」だけでなく、結果の通知・記録・報告・必要な措置までを一連で管理する必要があります。
健康診断とヒューム対策は役割が違う
健康診断は作業者の健康状態を確認するためのものであり、溶接ヒュームへのばく露そのものを減らす対策ではありません。
一方、換気、発生源での捕集、呼吸用保護具などは、作業者がヒュームにさらされる量を減らすための対策です。
そのため、健康診断による健康管理と、作業環境・作業方法によるばく露低減を両方行うことが重要です。
健康診断
健康状態や症状、作業条件を確認し、必要な対応につなげる。
ばく露対策
換気・捕集・呼吸用保護具などでヒュームへのばく露を減らす。
例えば、健康診断で異常がなくても、ヒュームが作業者の呼吸域へ流れている状態をそのままにしてよいわけではありません。日常のばく露をできるだけ抑える設備・運用を検討します。
発生源でのばく露低減に使うヒュームコレクター
ヒュームコレクターは、溶接ヒュームを発生源付近から吸引・捕集するための装置です。
そこで、健康診断と並行して作業環境を見直す場合には、換気や呼吸用保護具とともに、発生源でヒュームを捕集する方法も検討できます。

ただし、ヒュームコレクターを導入すれば健康診断やほかの法令対応が不要になるわけではありません。必要な健康管理と、現場に合ったばく露対策を組み合わせます。
ONIKAZEのヒュームコレクター
赤松電機製作所では、溶接ヒューム対策向けにFSMシリーズとFM-220を展開しています。
よくある質問|溶接作業者の健康診断
溶接ヒュームの健康診断について、よく確認されるポイントをまとめます。
対象・実施時期に関する質問
Q.誰が特殊健康診断の対象ですか?
Q.健康診断はどのくらいの頻度で行いますか?
Q.じん肺健康診断も必要ですか?
検査・健診後の対応に関する質問
Q.一次健康診断では何を確認しますか?
Q.全員が二次健康診断を受けますか?
Q.健康診断を受ければヒューム対策は十分ですか?
まとめ|健康診断とばく露対策をセットで管理する
溶接ヒュームを製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者には、特化則に基づく健康診断が必要です。
まず、雇入れ・配置替え時と、その後6か月以内ごとに1回、一次健康診断を行います。
また、一次健康診断の結果などから医師が必要と認めた場合は、胸部の検査や神経学的検査、マンガン量の測定などを含む二次健康診断へ進みます。
さらに、健康診断後には結果の通知、個人票の保存、労働基準監督署への報告、必要に応じた就業上の措置まで行います。
そして、対象となる作業者では、特化則の健康診断とは別にじん肺健康診断も確認する必要があります。
つまり、健康診断による健康管理と、換気・発生源での捕集・呼吸用保護具などによるばく露対策をセットで継続することが重要です。