溶接ヒューム対策で労災リスクを低減!健康被害の例と対策方法を解説!
溶接ヒュームは、金属アーク溶接等作業で発生する微細な粒子です。ばく露が続くと、呼吸器や神経機能などへの健康影響が問題になるため、作業環境と健康管理の両面から対策する必要があります。
また、溶接ヒュームは2021年4月1日から特定化学物質(第2類物質)に追加され、特殊健康診断や作業主任者の選任などの健康障害防止措置が強化されました。
ただし、健康障害が発生したからといって自動的に「労災認定」されるわけではありません。疾病について労災保険給付の対象となるには、業務との間に相当因果関係が認められる必要があります。
本記事では、溶接ヒュームによる主な健康リスクと、労災リスクを下げるために現場で押さえておきたい考え方を整理します。
INFORMATION DATE
法令・健康影響に関する記載は2026年9月18日時点で確認した厚生労働省・IARC等の公開情報に基づいています。法令や医学的知見は更新されるため、実務では最新の公的情報をご確認ください。

KEY POINTS
健康障害は「発生してから」ではなく、ばく露を減らす段階で対策する
健康リスク
じん肺、マンガンによる神経影響、肺がんリスクなどを確認する。
ばく露低減
発生源での捕集、換気、呼吸用保護具を組み合わせる。
健康管理
対象者の健康診断や作業条件の管理を継続する。
まず確認|「溶接ヒュームによる労災」とは何を指す?
溶接ヒュームによる健康障害を「労災」という言葉で扱う場合、健康障害そのものと労災認定は分けて考える必要があります。
労災保険上の業務上疾病は、単に勤務中に発症した疾病ではありません。業務上の有害因子へのばく露と疾病との間に相当因果関係が認められる場合に、労災保険給付の対象となります。
そのため、本記事では「労災認定される病気の一覧」を示すのではなく、溶接ヒュームへのばく露によって懸念される健康障害と、そのリスクを下げるための予防策を中心に解説します。
OFFICIAL INFORMATION
大阪労働局|業務上の疾病について確認する →溶接ヒュームとは?健康管理が強化された背景
溶接ヒュームは、金属アーク溶接などで金属が高温となり、蒸気になった金属が空気中で冷却・凝固することで生じる微細な粒子です。

以前から粉じん障害防止規則などによる対策が行われてきましたが、マンガンによる神経機能障害に加え、溶接ヒュームへのばく露で肺がんリスクが上昇することなどが報告されました。
その結果、溶接ヒュームは独立した特定化学物質(第2類物質)として追加され、2021年4月1日から健康障害防止措置が強化されています。
なお、金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者には、特化則に基づく特殊健康診断に加え、じん肺法に基づくじん肺健康診断も関係します。
じん肺・溶接工肺|粉じんの蓄積で起こる健康障害
溶接作業で発生するヒュームを長期間吸入すると、じん肺につながる可能性があります。
厚生労働省の資料では、酸化鉄を主体とする微小な金属粉じんを吸入して生じるものを「溶接工肺」と説明しています。

「一度かかると必ず進行する」とは限らない
元の記事では、じん肺について「有効な治療方法がなく、溶接をやめても進行する」と一律に説明していました。しかし、厚生労働省の資料では、溶接工肺は溶接作業を回避することで軽快する可能性があるじん肺とされています。
一方で、じん肺そのものは健康管理が必要な疾病です。そのため、「発症してから考える」のではなく、日常的にヒュームばく露を減らすことが重要です。
マンガン|神経機能への影響に注意
溶接ヒュームにはマンガンが含まれる場合があり、ばく露による神経機能障害が問題になります。
厚生労働省の疾病認定基準では、マンガン等による疾病について、初期の神経衰弱様症状や、その後のパーキンソン症候群様症状を中心とした神経症状が示されています。

継続的なばく露を減らすことが重要
また、特化則に基づく特殊健康診断でも、せき等の呼吸器症状に加えて、パーキンソン症候群様症状などを確認する項目があります。
したがって、体調変化の確認だけでなく、換気、発生源での捕集、呼吸用保護具などを使って、日常的なばく露そのものを抑える必要があります。
肺がん|溶接ヒュームばく露との関連
溶接ヒュームへのばく露については、肺がんリスクの上昇も報告されています。
厚生労働省は、溶接ヒュームを特定化学物質へ追加した背景の一つとして、肺がんリスクの上昇が多数報告され、ばく露量と作用の関係も大規模疫学研究等で確認されたことを挙げています。
さらに、IARC(国際がん研究機関)は溶接ヒュームを「ヒトに対して発がん性がある(Group 1)」と評価し、肺がんについて十分な証拠があるとしています。

原因物質や発症経路には未解明な点もある
ただし、厚生労働省の検討では、肺がんリスク上昇の原因となる個別の物質や機序について未解明な点があることも示されています。
そのため、必要以上に断定的な表現をするのではなく、ばく露をできるだけ減らす予防管理を重視することが現実的です。
労災リスクを下げるために事業者が確認すること
健康障害を防ぐには、健康診断だけでなく、作業環境とばく露の管理を組み合わせる必要があります。
HEALTH CHECK
健康診断
対象となる労働者へ特化則・じん肺法に基づく健康診断を実施する。
EXPOSURE
濃度測定
継続的な屋内作業で作業方法を新規採用・変更する場合などに個人ばく露測定を行う。
CONTROL
ばく露低減
換気、発生源での捕集、呼吸用保護具などを現場条件に合わせて組み合わせる。
例えば、個人ばく露測定はすべての溶接作業で常に必要なわけではありません。対象となる条件や測定方法は、濃度測定の記事で詳しく整理しています。
対策は「捕集・換気・保護具」を組み合わせる
溶接ヒュームへのばく露を抑える方法には、それぞれ異なる役割があります。
まず、発生源付近でヒュームを吸引・捕集する方法があります。また、作業場全体の濃度を下げる換気と、作業者本人を守る呼吸用保護具も重要です。
つまり、どれか一つだけで完結させるのではなく、溶接位置、作業範囲、換気条件、火花の状況などに応じて組み合わせます。

発生源で捕集
ヒュームコレクター等で広がる前に吸引する。
換気
作業場内にヒュームが滞留するのを抑える。
呼吸用保護具
測定結果や作業条件に合うものを選び、適切に装着する。
なお、対策全体や換気方法については専用記事で詳しく解説しています。本記事では健康リスクの理解を中心とします。
発生源対策として使うヒュームコレクター
ヒュームコレクターは、溶接ヒュームを発生源付近から吸引・捕集するための装置です。
そのため、作業者の呼吸域や作業場全体へ広がる前にヒュームを減らす方法の一つとして検討できます。

ただし、装置を設置すれば自動的に労災を防げるわけではありません。吸引位置、必要風量、火花・スパッタの状況、日常点検、呼吸用保護具などを含めて運用します。
ONIKAZEのヒュームコレクター
赤松電機製作所では、溶接ヒューム対策向けにFSMシリーズとFM-220を展開しています。
よくある質問|溶接ヒュームの健康リスクと労災
健康影響や労災について、よく確認されるポイントをまとめます。
健康影響に関する質問
Q.溶接ヒュームではどのような健康影響が問題になりますか?
Q.じん肺は溶接をやめても必ず進行しますか?
Q.溶接ヒュームには発がん性がありますか?
労災・対策に関する質問
Q.溶接作業中に病気になれば自動的に労災認定されますか?
Q.すべての溶接作業で個人ばく露測定が必要ですか?
Q.ヒュームコレクターを設置すれば労災対策は十分ですか?
まとめ|健康障害を防ぐには、ばく露を減らす段階から管理する
溶接ヒュームによる健康リスクとして、じん肺、マンガンによる神経機能への影響、肺がんリスクの上昇などが知られています。
まず、疾病が発生してから対応するのではなく、作業方法や設備を見直してヒュームへのばく露を減らすことが基本です。
また、対象となる労働者への健康診断や、条件に応じた濃度測定、適切な呼吸用保護具の選定も重要です。
さらに、発生源付近での捕集や換気を組み合わせることで、作業者がヒュームにさらされる機会そのものを減らしていきます。
つまり、労災リスクを下げるには「病気になった後」ではなく、日常のばく露管理・健康管理・設備運用を継続することが重要です。